トップインタビュー
富士フイルム株式会社
執行役員 人事部長
吉沢勝氏(よしざわ まさる)
富士フイルムは、2000年以降、コア事業だった写真フィルムの大幅縮小という危機に直面しました。しかし、そこから構造改革を断行、事業の多角化に成功し今では他社にはない技術で先進的な製品を世に送り出しています。それを可能にしたのは、同社が持つ技術基盤、財務基盤、ブランド力などの経営資源はもちろん、それらを活かす質の高い人財があったからではないでしょうか。
富士フイルム人事トップの吉沢執行役員に、富士フイルムウエイによる徹底した”人間力”の育成についてお話を伺いました。
ビジネスポリシー ~企業として大事にしていること
「Value From Innovation」
~オープンイノベーションで顧客ニーズに応えていく

「Value From Innovation」
経営改革が進むなかで、世界中の特に若い社員から、「富士フイルムグループがどのような企業か分かりづらくなってきている」という声が増えてきました。
フイルム専業メーカーから事業多角化へ転換を図った良い面でもあるのですが、80周年のここで一度、富士フイルムグループの存在を新たに定義し、これから目指す方向を社内外に示そうということになったのです。
「Value from Innovation」が示すのは、富士フイルムは、マーケットやお客様のニーズを徹底的に聞き、グループの持っている知恵や技術の力でイノベーションを起こし、それに応えていくというメッセージです。

そこで、これも今年1月に本社2階に「Open Innovation Hub」という施設を開設しました。ここはパートナー企業、顧客企業との新しいビジネスのディスカッションの場となっています。
富士フイルムウエイ ~富士フイルム社員が目指す姿と本質的な仕事の進め方
グループをホールディングス化したことを機に、2007年に「富士フイルムウエイ」を策定しました。 富士フイルムウエイは、グループ社員が目指すべき姿の「FF-マインド」と、仕事の進め方を示した「FF-メソッド」で構成されています。 「FF-マインド」は、会長の古森がよく話している「ビジネス五体論」そのものです。 五体論とは、その人の“人間力”の総和が、ビジネスの成果に反映されるという考え方で、
ビジネス五体論・・・“人間力”の総和
上記すべてを動員して仕事に取り組み、またそれぞれの要素をバランス良く磨いていくことが重要だということです。
仕事の進め方である「FF-メソッド」では、一般的に「Plan-Do-Check-Action」といわれているビジネスのプロセスサイクルを「See-Think-Plan-Do」と定義しています。- 目・耳・鼻・肌 ⇒ 情報収集力
- 頭 ⇒ 分析、本質を見抜く、戦略/戦術策定力
- 胸 ⇒ 良心、関心、共感、愛情
- 腹 ⇒ 度胸、勇気、根性
- 足腰 ⇒ 行動力、現地・現物・現場主義
- 腕・手 ⇒ テクニック、(時に)腕力
- 口 ⇒ 表現力、ディベート力
- 顔・姿勢 ⇒ 姿勢、態度、知性、内面の輝き
事業環境や競争環境の変化が激しい現在では、いきなりPlanから入るのではなく、その前にまず、事実や状況を良く見極めること(See:読む)、そしてそれを評価・分析し、本質を捉えた課題を設定すること(Think:考える)ことが大事であるとしています。
事業領域がシンプルで右肩上がりの時代は、シーズ(技術)からのプロダクトアウトであっても、ブランド力とマスメディアを使ったプロモーションによって、事業戦略や販売戦略は、従来のやり方を踏襲することで結果が出ました。
しかし、本業が危機に陥ってから、事業構造改革を進める中で弊社の戦略力に磨きをかける必要性に気がつきました。つまり、これからは仕事にとり組む考え方やメソッドも変えていかなければならないということです。そのため、FF-メソッドとして「See-Think-Plan-Do」を全社展開しています。 富士フイルムウエイは、研修プログラムにも組み込まれ、海外現法のHRマネージャーをトレーナーとして育成し、世界中で研修を実施しています。
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